44歳のデニー・ハムリンがNASCARカップシリーズで約11か月間勝利から遠ざかっていた頃、多くの人は彼の目標が遠のいているように感じていた。 もちろん、彼がいまだ獲得していないカップシリーズのチャンピオンシップも話題になるが、近年のプレーオフ制によって、その価値の捉え方はドライバーによって異なる。ハムリンにとって最も重要なのは、歴代勝利数ランキングでトップ10入りすることだ。 そして、今回のミシガン・インターナショナル・スピードウェイでの勝利を含め、2か月半で3勝を積み重ねたことで、その夢が現実味を帯びてきた。 現在、ハムリンのカップシリーズ通算勝利数は57勝。これは、歴代10位のケビン・ハーヴィック(60勝)にわずか3勝差まで迫っている。勢いを増した彼は、これまでのように「60勝を目指す」と言うのではなく、さらに高い目標に言及し始めた。 当初は60勝を目指すと繰り返していたが、次第に「61勝を挙げて単独10位に立ちたい」と語るようになった。そして、ミシガンでの勝利後にはこう語っている。 「少なくとも、生きているうちに歴代勝利数トップ10に入りたいんだ。」 だが、それを達成するには61勝でも足りないかもしれないと、ハムリン自身は見ている。 「たぶんジョーイ・ロガノや、間違いなくカイル・ラーソンが僕を抜いていくだろうね。僕よりも若くしてキャリアを始めたドライバーたちが勝利数で追い抜く可能性を考慮しないといけない」と話す。 ちなみに、ケビン・ハーヴィックの次、9位には通算63勝のカイル・ブッシュがいる。現役でまだ勝利数を増やしているブッシュを超えることは、残されたシーズンが限られているハムリンにとっては容易な目標ではない。 実際、ハムリンはすでに通算出走回数が700戦を超えており、「800戦までは走らない」と明言している(年間36戦)。 「今のレベルで戦えなくなったら、それで引退するつもりだ。惰性で続ける気はない。最後のシーズンもこうして勝ち続ける形で過ごしたい」と、彼の決意は固い。 NASCARの歴史を見ても、700戦以上の出走経験を持つ20人のうち、700戦目以降に勝利を挙げたのは10人のみ。その中で複数回勝ったのはわずか6人しかいない。ハムリンのような選手は、すでに非常に稀な存在だ。 これからさらに勝利を重ねられる可能性はあるが、彼は現実的でもある。勝利は簡単ではなく、今回のミシガンでのレースが最後になる可能性すらある。 「また1つ年を重ねるたびに、今のレベルでどれだけ続けられるのか自問するよ」と、11月に45歳を迎えるハムリンは語った。「57勝で終わるかもしれない。誰にも未来は分からない。でも、これが最後だと思って楽しむよ。そして月曜日にはいつも通り、仕事に戻るだけさ。」
